支払督促と少額起訴どちらがいいの?ケースごとに徹底解説

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支払督促と少額訴訟どっちを利用すれば良いか迷いませんか?

債権回収の手段として用いられる裁判所での手続きには、通常の訴訟や調停の他に「支払督促」や「少額訴訟」といった手続きがあります。どちらもビジネスから口約束の貸し借りまで、広く債権の回収に使える方法です。しかし、せっかくの方法も、特徴をおさえて使わないとマイナスになってしまうことがあります。

貸したお金を回収したいと悩んでいらっしゃる方は、自分に合った方法を選択することが大切なのです。

支払督促と少額訴訟はどんな債権回収方法なの?

二つの方法が適するケースについてお話する前に、まずは「支払督促」と「少額訴訟」がどんな方法かを簡単に解説しましょう。既に方法をご存知の方も、この機会におさらいをしてさらに知識を深めましょう。

支払督促の特徴と手続きとは

支払督促とは「裁判所で手続きすることによって債務者(お金を借りた側)に督促状を送付する方法」です。督促するだけなら、ハガキや電話で十分だと思うかもしれません。わざわざ裁判所で手続きしなくても、自分でハガキを買って催促する方が早いとも思うかもしれません。

支払督促は個人での電話やハガキでの催促と異なり、裁判所の力を借りる方法です。裁判所で手続きをすることでしかできない督促だからこそ「とても強い力」を持っています。裁判所で手続きさせておきながら、個人の催促と同じような効果しかなければ、手続きするメリットがありません。もちろん、この点に関しては相応のメリットが規定されています。順番に見ていきましょう。

支払督促はどんな時に使えるの?

支払督促は「金銭の支払又は有価証券若しくは代替物の引渡しを求める場合」にのみ使える方法だと法律に規定されています。

例えば、AさんとBさんが100万円の貸し借りをしたとします。100万円の貸し借りは「金銭の支払い」ですから、もちろん支払督促を使うことができます。

では、AさんがBさんの似顔絵を描くという契約をした場合はどうでしょう。この場合は、支払督促を使うことのできる条件には含まれていません。含まれていないということは、このケースにおいて支払督促は使えないということです

支払督促の発送後は強力な切り札に化ける

支払督促は、債権者が管轄の裁判所(相手の住所地を管轄する簡易裁判所)の裁判所書記官に対して申し立てをすることにより行います。

申し立てが行われると、申立書や手数料(印紙)の確認が行われます。裁判所が絡むため、ここから裁判のような厳格な手続きがスタートしそうな印象があります。しかし、支払督促の場合は、決して厳格な手続きではありません。書類審査のみで発送できるため、裁判のような審理や証拠調べ、弁論などは行われません。「支払督促をお願いします」「はい、わかりました。書類をチェックいたします。請求に理由もありますね。OKです。発送します」という流れです。訴訟に比べるとかなりお手軽にできてしまいます。

裁判所の手続の中ではお手軽な部類に入る支払督促ですが、効果は個人で電話やハガキで行う催促よりもかなり強力なものとなっています。

個人で電話やハガキで返済の催促をしたとします。この場合、債務者が返済に応じないこともありますし、無視されることもあります。あくまで「返済してください」という催促のみで、強制力はありません。しかし、支払督促は違います。

支払督促は、「支払督促を債務者が受け取ってから2週間以内に債務者から異議申し立てがない」と「仮執行宣言」を付してもらうことができるのです。仮執行宣言を付してもらうことにより、債権者は債務者に対し即座に強制執行をすることができます。個人のハガキや電話といった催促には、当然ですがここまで強力な効果があります。

支払督促が債権の回収に有効だと言われるのは、一定期間経過とともに「支払督促」が「強制執行が可能となる仮執行宣言付きの支払督促」に化けるからなのです。支払督促を見た債務者が素直に返済してくれればよし、無視するなら強制執行を用いて回収すればよし、という流れです。

少額訴訟の特徴と手続きとは

少額訴訟とは「60万円以下の金銭の支払を求める訴え」について「原則的に1回の審理で決着をつける」債権回収の手続きです。

個人間における少額の貸し借りや、簡易裁判所で比較的少ない額の家賃の支払いを求めることを目的とするケースでは、訴訟で長い時間をかけて決着をつけようとすると弁護士費用や訴訟費用がデメリットになります。返済を求める額より訴訟費用や弁護士費用の方が大きくなることがあるためです。少額訴訟は短期決戦で少額の債権回収をはかる方法として使われています。

少額訴訟の使い方とは?

少額訴訟は、裁判所に少額訴訟での審理を求めて申し立てをすることでスタートします。申し立ての時に「少額訴訟でお願いします」と告げないと、通常の訴訟になってしまいます。少額訴訟の相手方として訴えられた側が少額訴訟で審理することに異議がなければ、いざ短期決戦での訴訟がスタートとなります。

少額訴訟は短期決戦が魅力!ただし制約もある

支払督促も、条件に当てはまるケースでなければ使うことができませんでした。少額訴訟にも条件があります。また、制約もあります。

条件の一つは前述しました。「60万円以下の金銭の支払を求める訴え」でなければ使うことができません。つまり、貸した50万円のお金を返して欲しい場合には少額訴訟を使うことができますが、100万円の場合は使うことができません。

また、少額訴訟は「原則的に1回の審理で決着をつける」ため、証拠は一度の審理で取り調べることができるものに限られます。事実関係が複雑な場合や証拠が多岐に渡る場合は裁判所の判断で通常の訴訟に変更されることがあります。「1回で判決まで出します。1回の審理で確認できるような証拠を準備してきてくださいね」が少額訴訟のスタンスです。

他にも少額訴訟には年間の利用回数制限があります。1年に同じ裁判所で少額訴訟ができるのは10回と定められています。これは、消費者金融などが契約者に対し少額訴訟を乱発することを防ぐための制約です。

支払督促と少額訴訟どっち?方法選びのコツ

支払督促と少額訴訟は特徴的な債権回収方法です。「使うなら少額訴訟とどっちがいいの?」「ビジネスの場合は支払督促の方が有効なの?」と、選択に悩んでしまうこともあるはずです。二つの方法をふまえて、具体例を挙げてどちらも方法を選択した方がいいのか検証してみましょう。どのケースも、よくある債権トラブルです。

未払いの家賃を取り立てたい!

簡易裁判所で家賃を取り立て、回収したい場合「支払ってもらいたい家賃額」と「入居者が払ってくれそうか」についてよく検討することが必要です。少額訴訟は60万円以下という制限があるため、額がそれ以上の場合、少額訴訟を選択することはできません。

支払督促に金額制限はありません。だからといって「じゃあ支払督促で回収しよう」と考えるのは早計です。支払督促は強制執行ができることが強みなのですが、これはあくまで2週間以内に債務者から異議申し立てがない場合です。債務者から異議が出されるとすぐに強制執行をすることはできません。通常の訴訟に移行し、争うことになります。

簡易裁判所で家賃を取り立てたい場合、「債権額」と「債務者は支払督促に異議を出しそうか」という2つのポイントをよく考えて選択する必要があります。

ビジネスの債権は支払い督促と少額訴訟どっち?

ビジネスの債権には支払い督促と少額訴訟どっちが適しているのでしょうか。

ビジネスの支払いにも色々な種類があります。例えばインターネット通販のビジネスでは額の小さな商品をたくさん販売し、お客さんから販売代金を回収できず困るという話をよく耳にします。これは小さな額の債権がたくさんあって困っているというビジネスにおける金銭問題です。

ビジネスでは大きな額のお金も動きます。会社間の取引では、売掛金などの高額な取引が行われ、会社の経営状況や商品の販売状況によっては「支払えない」「それは困る」というやり取りが行われることになります。

これは大きな額の数の少ない債権が存在するが、額が大きいからこそ返済に難航しているというケースです。ビジネスには幅広い業種が存在していますから、債権の問題も業種により事情が異なってくる場合があります。重機販売会社とインターネット上の雑貨販売ビジネスではかなり債権問題のケースが違ってくることでしょう。

ビジネスの債権で支払い督促と少額訴訟どっちと悩んだ場合は、「回収したい債権額」や「回収したい債権の数がどれだけあるか」によってどちらの手段を用いるか検討しましょう。

口約束を理由に返済してくれない!

口約束でお金の貸し借りをした場合は支払い督促にするべきでしょうか。それとも少額訴訟にするべきでしょうか。

同じ口約束でも、ケースバイケースです。例えばAさんとBさんが口約束で50万円の貸し借りをしました。額だけ見ると少額訴訟も使えますし、支払督促も使えます。支払督促と少額訴訟どっちと悩むパターンです。

Bさんは口約束での返済日を忘れているようでしたが、言えば返済してくれそうです。Aさんは口約束の貸し借りで返済を促す方法として支払い督促をセレクトしました。支払督促を受け取ったBさんは「忘れていた。ごめんなさい!」と、慌てて返済してくれました。強制執行の出る幕はありませんでした。めでたしめでたしです。

しかし、これはあくまでBさんは支払督促を見て返済してくれる可能性が高かったからこそ使えた手段ではないでしょうか。Bさんが支払督促を見て即座に異議を出す可能性が高ければどうでしょう。Bさんが「口約束だから覚えていない。支払い督促に異議あり!」なんて裁判所に対し即座に異議申し立てをしたらどうでしょうか。

異議が出てしまえばすぐに強制執行はできません。通常の訴訟で戦うことになります。支払督促が効果的なのはあくまで「異議を出さない可能性が高い」「無視するだろうから強制執行できそう」「支払督促を見たら大慌てで返済してくれそう」な場合なのです。

「金額」「Bさんはどんな態度に出るか」「口約束以外の証拠はあるのか」をキーワードに、どちらの方法がより合っているかよく考えて選びましょう。弁護士や司法書士に自分の場合はどちらが合っているか相談するのもいいでしょう。

まとめ

支払督促と少額訴訟の特徴を簡単に解説し、ケースごとに支払督促と少額訴訟どっちがより債権の回収に向くかについても、合わせてお話しました。どちらも返済してくれない債務者に対して効果的な方法ですが、特徴と自分の状況、相手の返済態度をよく考えて使わないと意味がありません。

支払督促と少額訴訟どっちと悩んだ時は、状況を一つずつ支払督促と少額訴訟の使用条件に当てはまるかを見て行くことからはじめてみてはいかがでしょう。それでも悩む場合や本当に適しているか悩む場合は、弁護士や司法書士に相談するといいでしょう。

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