支払督促手続きの流れ・費用・不送達の対処法

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世の中には訴訟や調停、少額訴訟など、債権回収にの方法がいくつかありますが、「支払督促」も、ビジネスから個人間のお金の貸し借りまで、債権回収のために広く使われている方法の一つです。

それ以外にも、自分で電話や手紙を使って債務者に対し「そろそろお金を返していただけませんか」と催促する債権回収の方法や、弁護士に依頼し「本来は一括払いですが、返済が大変なら分割払いでいかがでしょう」と話をつけてもらうこと(示談)も、債権問題を解決する方法の一つです。

この記事では、支払督促とはどんな方法なのか、支払督促手続きの流れや費用についてご説明いたします。

支払督促の方法とは?手続きの流れ

支払督促とは「裁判所から督促状を債務者に送ってもらい返済を促す」という方法で、「金銭の支払又は有価証券若しくは代替物の引渡しを求める場合」にのみ使えます。金銭の額に制限は定められていません。

簡単に言うと「裁判所から返済を催促する通知を送ってもらう」方法で、債務者が複数いれば、もちろん人数分の支払督促の発送が可能です。

個人で電話や手紙を用いて返済を促す場合「まあ、無視してもいいや」と債務者には軽く受け止められがちですが、支払督促は裁判所から発送される督促文書ですので「裁判所から督促が届いた!」と債務者はびっくりすることでしょう。個人的な返済の催促のように軽く考える債務者はまずいないはずです。

あなたも裁判所から通知が届けばびっくりするのではないでしょうか。それと同じで、支払督促は債務者へ心理的なプレッシャーを与えることを一つの目的としています。プレッシャーで返済に繋がればいいという手続きが「支払督促」なのです。

支払督促の最大のメリットは「強制執行」できること

支払督促は裁判所でしかできない手続きですから特別な効力が認められています。その効力とは「強制執行ができてしまう」という効力です。債務者への心理的プレッシャーに加えて、強力な効力を目的として支払督促を使う債権者もいます。

強制執行は債務者の財産を強制的に取り上げて返済に充てる方法です。とても強力な方法だからこそ、条件がとても厳しいのです。

債権者なら誰でも強制執行できるというわけではありません。また、したい時にすぐに強制執行ができるわけでもありません。強制執行手続きに必要な公的な書類などを用意しなければいけないのです。

この公的な書類は民事執行法という法律に細かく定められています。個人間の口約束や、個人で作った契約書は対象外となります。代表的なものは、民事訴訟の判決です。

強制執行をしたいと考えても、判決を得ることは大変です。長く苦しい通常訴訟を取り下げずに戦い抜かなければいけません。支払督促は通常訴訟のように判決を得るまで何度も期日の準備に苦労し、判決を得るまで戦うという必要はありません。支払督促は「債務者が受け取ってから2週間以内に異議申し立てがないと仮執行宣言を付してもらうこと」ができます。

仮執行の宣言を付してもらうことにより、支払督促は通常訴訟の判決のように、強制執行ができる道具に早変わりするのです。個人の催促ではここまで強力な効果はありません。裁判所でしかできない督促だからこそ、支払督促は強力な力を持っているのだと考えてみてください。

裁判所の手続にはそれぞれ特徴があります。「少額訴訟で家賃滞納の解決をすべきか。それとも支払督促を使うべきだろうか」とよく考えて方法を選ぶことが解決への近道になるのです。

支払い督促の送り方は?手続きの流れ

支払い督促の送り方は簡単です。管轄の裁判所に必要書類と手数料(印紙や郵券など)を提出し「支払督促を送ってください」とお願いするだけです。管轄の裁判所は「債務者の住所を管轄する簡易裁判所」になります。

裁判所での手続きではあるのですが、訴訟のように何度も足を運ぶ必要がなく、手続きのために厳格な審査もありません。もちろん必要書類や手数料類のチェックはありますが、支払督促を送るために債務者と債権者を裁判所に呼んで証言を戦わせるといったことも行われていません。通常訴訟に比べるとかなり簡単という印象を受けるのではないでしょうか。

手続が適正に行われると、債務者のところに支払督促が届くという仕組みです。債務者に届いた時に通知を受け取ることを希望しておくと「債務者にきちんと届きましたよ」という「支払督促発布通知」が裁判所から債権者の手元に届きます。

支払督促が債務者に届いてから2週間経過により強制執行へ

支払督促を受け取った債務者は、驚いてすぐに返済することも考えられます。返済があれば強制執行をするまでもなく、債権問題は解決です。債務者が支払いに応じなければ期間経過を持って仮執行宣言を付してもらい、強制執行で債権を回収するという流れです。

ただし、2週間という期間が経過すればどんなケースでも強制執行できるというわけではありません。支払督促は訴訟で判決をもらうことと比較して簡単に強制執行ができてしまうからこそ、債務者側で強制執行にストップをかけることも簡単にできてしまうのです。また、債務者側が強制執行できる期間が定められているため、期間徒過によっても強制執行ができなくなってしまいます。

強制執行ができるケースとできないケース

強制執行ができなくなってしまうケースでは、ケースごとにその後の流れが変わってきます。

債権者側の事情によって強制執行ができなくなるケースがあります。債務者に支払督促が届いてから2週間が経過すれば、強制執行をすることができます。しかし、強制執行ができるのは、この2週間が経過した翌日から30日以内という制限があります。

仮執行宣言を付してもらわなかった場合や、仮執行宣言を付してもらっても2週間経過の翌日から30日が徒過してしまえば強制執行はできなくなってしまいます。

債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申し立てとして異議申立書を提出した場合も、強制執行をすることはできません。異議の限度で支払督促は効力を失い、通常訴訟に移行することになります。訴訟移行後にきっちりと戦って決着をつけてくださいということです。

また、債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立書を提出しない場合においても、強制執行のできる30日という期間内であり、かつ債権者が強制執行をしないうちに債務者が異議申立書を提出してしまうと、同じ結果になります。通常訴訟に移行した後は、訴訟として双方が証拠や言い分を出し合い、最終的に認可判決などの訴訟内容に応じた判決が下されることになります。

債権者と債務者が話し合い、強制執行をしないという結論を出す場合もあります。支払督促を見た債務者と債権者が示談などで返済問題に決着をつけるのです。この場合、債務者側が異議を申し立てていても、異議の取下げなどが行われます。

支払督促が不送達の場合や相手が受け取らない場合はどうなるの?

支払督促を発送しても不送達の場合は、不送達の理由によって対処方法が異なります。

「不在」を理由として送達できない場合は、休日送達あるいは債務者の職場への送達を選択し、裁判所へ書面で再送達を申し出ることになります。

「転居先不明」「あて所に尋ねあたりません」という不送達理由の場合は、送達できないという通知を受けた日から2カ月以内に新しい送達場所を裁判所へ申し出る必要があります。申出をしなければ支払督促の取り下げとみなされます。

支払督促申立費用の内訳

支払督促は無料で行うことはできません。手続費用は自己負担となります。

申立費用は以下が基本的な支払送達の費用となります。申立手数料は債権額によって異なります。裁判所のホームページで確認可能です。

「申立手数料(裁判所を使うための手数料のようなもの)+申立手続費用(支払督促に使う郵券などの実費)」

申立手数料は100万円の債権回収に使う場合で5,000円、10万円の債権では500円となります。

債務者の手元に支払督促が届いた時に通知を希望する場合は「支払督促発布通知」を送ってもらうことになります。支払督促発布通知は別途費用が必要になります。ハガキでの通知か封書での通知かで費用が異なります。

この場合は基本的な支払督促の費用に、支払督促発布通知付郵便送達の費用も加算となります。仮執行宣言を付してもらうためにも費用が必要になります。費用は債務者の数や封書を使うのかハガキを使うのかによって変わってきます。事前に管轄の裁判所でよく確認しておきましょう。

債務者の異議申し立てなどにより通常訴訟に移行した場合は、貼用印紙などにより不足分を追加で納めることになります。もちろん、支払督促の手続きを弁護士に依頼した場合や訴訟対応をお願いした場合の弁護士費用は、裁判所に納める申立手数料や手続き費用とは別になります。

申立手続費用の最終的な内訳は以下となります。

「申立手数料(裁判所を使うための手数料のようなもの)+申立手続費用(支払督促に使う郵券などの実費)+支払督促発布通知の費用+仮執行宣言を付してもらう費用」

さらに考えておかなければならないのは、強制執行や訴訟に進んだ場合の費用です。強制執行に進むと「強制執行の手続費用」「弁護士などの法律の専門家へ強制執行をお願いする費用」が必要になります。通常訴訟に進むと「通常訴訟の費用」「弁護士などの法律の専門家への訴訟依頼費用」が必要になります。必要な費用と手数料が上乗せされるかたちです。

支払督促そのものの手数料と費用だけでなく、強制執行の費用など、先を見据えた費用の準備計画が必要になります。

まとめ

支払督促は債権回収によく使われる方法です。「訴訟を経ずに強制執行まで駒を進めることができる」というメリットと債務者に心理的なプレッシャーを与えることができるというメリットがあるからです。メリットを生かすためにも、支払督促の費用や流れを簡単におさえておくことは必要です。

支払督促の他にも少額訴訟を活用するなどの方法があります。弁護士に相談することも、悩む方には有効な選択肢になります。最終的に法律の専門家に手続きの代理を依頼することになっても、基礎知識は弁護士と相談する際に役立ってくれるはずです。

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